可哀想って言ってるとき、あなたすっごく嬉しそうですよ 「私が笑ったら、死にますから」と、水品さんは言ったんだ。より マスコミやSNSの情報拡散に違和感を感じている人は「そうだそうだ」とうなずけるはず。 ただがむしゃらに戦ったり批判したりするのではなく、そうした世の中で自分がどう生きて…
明日からまた新しい冒険が始まるのね。 ルーム・オブ・ワンダーより 主人公のテルマはシングルマザーでキャリアウーマン。仕事ではタフな彼女も、事故を防げなかった後悔や、これまでの自分の母親ぶりを振り返って、深く落ちこんでしまっていた。 そ…
この傷、ほんとに首長竜にかまれたあとなんですかね…… 竜のいる島より 私がこの作品を初めて読んだのは小学生の頃。祖母の家から持って帰ってきた、三方背のついた分厚いハードカバー。母が子どもの頃に読んでいた本だ。 2018年1月に著者が亡くな…
子供でも、平気でうそをつく。 沈黙の町でより 初めにあらすじを読んだ時は、少年法への問題を提起する重厚なサスペンスかと思った。確かに少年が死んで、容疑者として同級生が浮上した。しかしこの作品が描いているのは、事件で…
トガリ山にのぼるのなら、風がうまれるところを見てきてちょうだい。 トガリ山のぼうけん(全8巻)より 食料は現地調達。獣や鳥から身を隠し、天候とも戦わなきゃいけない。 ネズミとテントウムシ。限りなく食物連鎖の下の方にいるコンビだけど、意外にもたくましい。食べられそうにな…
護られた者たちとそうでなかった者たちの境界線はいったいどこにあったのだろうか 護られなかった者たちへより 遠慮深いことが美徳とされていた時代は遥か昔。大きな声で自分の権利を主張する者が得をし、他人様に迷惑をかけてはいけないと真面目に生きる人が損をすることもしばしば。 権利の…
自分は今、おそらく美しい顔をしているだろうと思った。 美しい顔より 主人公のサナエは、マスコミを見下しながらも、彼らが望む「けなげな被災者」を演じることで生きる気力をとり戻していく。 実際、取材が入った地域には多くの支援物資が届くように…
自分の心のなかにしか、僕がいられる場所はないのだ。 じっと手を見るより 窪美澄作品に出てくる人物はみんな、残酷なほど正直だ。とても静かなのに、人間の不完全な部分を容赦なく、えぐってくる。 日常にかすかに漂う閉塞感や、華やかさとはほど遠い現実…
馬鹿を装っているのか、あるいは真性の馬鹿なのか……。 空中ブランコより 神経科なのに、診察にきた患者はまずビタミン注射を打たれる。患者の腕に刺さる針をじっと見つめて、医者は鼻息を荒くしている。そう、この医者、かなりヤバイ。 でもこのヤバさが…