可哀想って言ってるとき、あなたすっごく嬉しそうですよ

あらすじ

高校生の駒田(こまだ)は、ある日突然、隣の席の美少女・水品(みずしな)から「15分で1万円のバイトに興味はありませんか?」と持ちかけられる。

水品への興味からバイトを引き受けた駒田は、そのバイトの真の目的と水品の過去について徐々に知らされていく。

マスコミやSNSの情報拡散に違和感を感じている人は「そうだそうだ」とうなずけるはず。

ただがむしゃらに戦ったり批判したりするのではなく、そうした世の中で自分がどう生きていくのかを模索していく。

駒田と水品、ふたりはそれぞれ身内が残酷な事件に巻き込まれた過去を持つ。

他人と距離をとることで傷口にフタをし忘れようとする駒田に対して、水品はどれだけ時間が経っても癒えないトラウマに苦しめられていた。克服したいのに、まっすぐであるがゆえに傷口が乾かない。駒田は、そんな水品の不器用さに惹きつけられていく。

水品のトラウマは、事件そのよりも、事件とは無関係な者たちのむきだしの好奇心によって傷つけられたことが原因だった。

スマホの普及により、常に人はカメラを持ち歩き、SNSでだれでも発信者になれる時代になった。事件や災害で人が傷つく場面を撮影して動画サイトに公開する人がいれば、その映像を見て面白がる人もいる。動画サイトに公開された凄惨な映像を見て面白がる者もいる。

水品は、ゴシップ感覚で人の不幸を消費している者たちに対して、疑問と皮肉を投げかける。水品と彼女を囲む者たちの立場が逆転した瞬間、トラウマを乗り越えた水品の清々しさと痛々しさは、強烈なインパクトを残す。

テレビもネットも、どうしてもネガティブなニュースが目立つ。しかし目立たないだけで、いいニュースがまったくないわけではない。

どうせなら、どこのだれとも分からない人の不幸よりも、自分の身の周りで起きたちょっといいことを大事にした方が、明るい人生になるのではないか。

世界を変える力はないふたりが、不幸にまみれた世界を生き抜くための、たくましさを手に入れていく物語。