初めにあらすじを読んだ時は、少年法への問題を提起する重厚なサスペンスかと思った。確かに少年が死んで、容疑者として同級生が浮上した。しかしこの作品が描いているのは、…
日本の小説
護られた者たちとそうでなかった者たちの境界線はいったいどこにあったのだろうか
護られなかった者たちへより
遠慮深いことが美徳とされていた時代は遥か昔。大きな声で自分の権利を主張する者が得をし、他人様に迷惑をかけてはいけないと真面目に生きる人が損をすることもしばしば。<…
自分は今、おそらく美しい顔をしているだろうと思った。
美しい顔より
主人公のサナエは、マスコミを見下しながらも、彼らが望む「けなげな被災者」を演じることで生きる気力をとり戻していく。
実際、取材が入った地域には多く…
自分の心のなかにしか、僕がいられる場所はないのだ。
じっと手を見るより
窪美澄作品に出てくる人物はみんな、残酷なほど正直だ。とても静かなのに、人間の不完全な部分を容赦なく、えぐってくる。
日常にかすかに漂う閉塞感や、華…
馬鹿を装っているのか、あるいは真性の馬鹿なのか……。
空中ブランコより
神経科なのに、診察にきた患者はまずビタミン注射を打たれる。患者の腕に刺さる針をじっと見つめて、医者は鼻息を荒くしている。そう、この医者、かなりヤバイ。
…言葉は人を殺す道具です。作家はその道具で食べてゆくひどい生きものです。
砂上より
家族だからというだけで無条件に愛情が芽生えるわけではない。互いに無関心だけど、長く一緒に暮らしていたから相手のことはある程度分かってしまう、だから余計にイライラす…
ジョバンニはこういう棚から活字を拾っていくんですよね。拾った活字を箱に入れて……
活版印刷三日月堂 星たちの栞より
高校の図書館に古いシェイクスピアの全集があった。「おや、妖精ぢゃないかどこへゆくの?」なんて古めかしい書き方をしていたので決して読みやすくはなかったが、なんだかそ…
もしイチ彼と結婚できたら私は夫を見張り続ける看守の花嫁になる。
勝手にふるえてろより
このタイトルを見て、どういう作品を想像しただろうか。
目に飛びこんだ瞬間ドキッとさせる鋭さ、突き放すような乱暴さ、いじけたような湿っぽさ、そういっ…