コイツを使う羽目にならなければいいんだがな

あらすじ

反社会組織をターゲットにした強盗を生業にする男・銀狐。
引退前の最後の仕事としてヤクザの現金輸送車を襲撃するが、輸送車は空だった。

ヤクザ達は車に積んでいた7億円を銀狐が盗んだと思って追ってくる。

何者かにはめられた銀狐は逃走の末、非常用の隠れ家に向かう。
そこには野良と名乗る謎の少女がひそんでいた。

顔はおろか性別すら不明の幽霊のような仕事師
というキャラクターは、最近はあまり見なくなった。

いたるところに監視カメラがあり、性能のいいカメラがついたスマホをだれもが持っているから、完璧に姿を隠すのは難しい。

そういう時代に見切りをつけ引退を決めた銀狐と、最新技術を使いこなす野良が出会ったことで、物語は大きく動き出す。

「殺さず・弱者からは奪わず」を信条とする昔気質な銀狐。
ハッキング技術を駆使してひとりで生きてきた野良。

専門も世代もまったく異なるふたりだけど、裏社会で育ったという根っこの部分で通じ合っている。

読み進めるにつれ、銀狐の意外と面倒見がいいところや、ほめられると照れちゃう野良のかわいげが見えてくる。
だんだんとお互いを受け入れてバディーになっていくところが個人的にとても好き。

そんなふたりの関係性とは対象的に、彼らを追うヤクザ達のパートは非情で常にピリピリしている。
組同士の勢力争いに警察の横槍、銀狼討伐のために雇われた殺し屋コンビまで参戦して、どんどん殺伐としていく。

アクションシーンはスピーディーだし、敵の1手先を読んで動く手練同士の戦いは決着が見えなくてハラハラした。

そして銀狐をはめたのはだれなのかという謎も、わかりそうでわからないまま、まんまと最後まで引っ張られた。

闇で生きる者達が繰り広げるクライムサスペンス。