きみは自分が追わていると思っているのか?

あらすじ

舞台は未来のイングランド。
都市として機能している町はわずかで、あとは荒れ果てた無法地帯となった世界。

いつものように銀行強盗で金をせしめた少女・スカーレットは、逃げる途中、横転し獣に荒らされたバスの中で生き延びた少年・アルバートと出会う。

しぶしぶ彼を近くの町まで送るスカーレットだったが、執拗な追っ手がやって来る。

昨晩自分が殺した男達の死体の横で目を覚ましたスカーレットは、平然と礼拝マットを広げて瞑想を始める。
冒頭からなかなか衝撃的。でもそれが彼女の日常。

いつ人や獣に襲われるかわからない、きれいごとを言っていたら生きていけない荒廃した世界。

そんな中、キラキラした目で子どもみたいな夢を語るアルバートと出会う。

ディストピア・バディー冒険小説。

銃やナイフを使いこなし、大の大人を次々になぎ倒していくタフなスカーレット。
足手まといなアルバートに悪態ばっかりついちゃうけど、なんだかんだ言いつつ見捨てられない、いいやつ。

一方アルバートは、能天気すぎる発言でスカーレットをイライラさせるくせに、たまにびっくりするくらい鋭いことを言う。
こんな殺伐とした世界で、優しくて人懐っこい性格であっさり他人の心をひらいてしまう不思議な魅力がある。

このでこぼこコンビが、次々に襲い来るトラブルを力を合わせて切り抜けるうちに友情が芽生えていくお話。

そんな王道ストーリーをダークファンタジーな世界観でやるところが、この作品が一味違うところ。
文明が滅び、生物が進化(変化?)したことで町の外では人間は被食者となった、貴志祐介の『新世界より』を彷彿とさせる、ちょっと怖い世界。

救いが見えない世界観だからこそ、原始的な夢とか友情とかがキラリと輝いて見えたりするのかも。

お話はとりあえずひと段落したけど、全2巻だそうなので続きを楽しみに待ってます。