俺、そこまで読書家じゃないよ。好きなのは、本というより図書室。

あらすじ

高校の図書室で、10年間貸し出されたままだった本が返却された。

だれが返したのか、本の間にはさまれていた不可解なメモの意味はなんなのか。

友人の代わりに図書当番を引き受けた百瀬(ももせ)は、たまたまその本に気づき、謎を追いかけていく。

図書室は本との出会いの場だけでなく、居場所としての役割も大きい。

来る者は拒まず、干渉もしない、安全地帯。

著者の、本だけでなく、図書室への愛を感じる作品。

学校には、ひとつやふたつは名物があるもの。
この物語の高校の名物は、体育祭のクラス別ダンス。

曲は毎年決まってBay City Rollersの「Saturday Night」、振り付けも創立当初から変わっていないという伝統ある演目。

その縛りの中で個性を出そうと、コスプレしたり隊列を工夫したり、体育祭前はどのクラスも準備に熱が入る。

ここで少しでも違和感を持った人なら、きっとこの小説は刺さる。
特に何も感じなかったのなら、きっと新しい気づきがある。

(一応言っておくと、選曲センスが悪いとか、そういうことではない。
体育祭当日のシーンは、ぜひ曲を聞きながら読んでほしい)

これは、そんな熱にうかされたクラスメイトを、図書室から眺めることしかできない生徒達が主人公。

体育祭に参加できない暇つぶしで追い始めた、10年ぶりに返却された本のミステリー。
過去のことを調べるにうちに、それが現代の問題をも浮き彫りにしていく。

「伝統」に隠れた思考停止をぶっ潰す、鮮烈な青春小説。