あらすじ
発注ミスで営業成績トップになってしまった修哉。
本当のことを言うことができず、ミスを隠すために嘘を重ねていく。
その過程で交通事故を目撃し、自分の嘘を守るために証言から逃げるのだが……。
鋭い切り口で描いた5本の短編集。
発注ミスで営業成績トップになってしまった修哉。
本当のことを言うことができず、ミスを隠すために嘘を重ねていく。
その過程で交通事故を目撃し、自分の嘘を守るために証言から逃げるのだが……。
鋭い切り口で描いた5本の短編集。
おいしい料理も、満腹で苦しくなるまで食べてしまうと、もう満足してしまってあまりリピートしたくならない。
逆にちょっと物足りないくらいで終わらせておくと、すぐにまた食べたくなるもの。
小説も同じ。
短くても濃密な5作品がそろっていて、それぞれに意表を突く仕掛けが用意されてる。
どれも、えっ、ちょっと待って、このあとどうなるの!となったところで終わってしまい、おあずけを食らった物足りなさのまま、次の作品に進む。
まんまとハマっている。
あらすじに書いた最初の一作『目撃者はいなかった』は、最初から最後まで緊張感と嫌な汗が止まらない。
本当のことを言うタイミングを逃してしまい、今さら取り返しがつかないからと嘘に嘘を重ね、ミスをなかったことにしようと画策する。
元々は悪い人間ではないからこそ、罪悪感にさいなまれ、バレたらどうしようとビビりまくり、追い詰められていくドキドキ感がたまらない。
題材は、意識的、あるいは無意識の保身や抑圧や悪意など。
こう書くと怖そうに見えるけど、ひとつひとつがエンターテイメントとして完成されているから、さくさく読める。
まあ、確かに、あんまり明るくはないけど。でも最語の一作はちょっと暖かさが残るラストなので、一冊の本としての後味はいい。
人間の心の弱さやいびつさを、ピリッと刺激的なミステリーに仕上げた、極上の短編集。