トガリ山にのぼるのなら、風がうまれるところを見てきてちょうだい。

あらすじ

てっぺんが雲に突き刺さるほど高いトガリ山。トガリネズミのトガリィは一人前になるためにトガリ山のてっぺんを目指す。テントウムシの相棒・テントと一緒に。

食料は現地調達。獣や鳥から身を隠し、天候とも戦わなきゃいけない。

ネズミとテントウムシ。限りなく食物連鎖の下の方にいるコンビだけど、意外にもたくましい。食べられそうになったり、助けてもらったり、逆に自分よりも大きな生き物を助けてあげたり。

命の循環と人情とファンタジーが、いいバランスでミックスされている。

とにかく、たくさんの生き物が出てくる。

鉛筆で描く優しいイラストは、リアルなのにとてもかわいらしい。

生き物はもちろん、彼らがくらす自然の風景も素敵。葉っぱを通り抜ける日差しの暖かさ、風の柔らかさ、川辺のひんやりとした湿気、夜の静けさが、本の最初と最後の数枚のカラーページにぎゅっと閉じこめられている。

本文にも、全ページに挿絵が入っているので、読書ビギナーのキッズにおすすめ。

韻を踏んだ言葉遊びもあって、それが分かるような年齢になると、また楽しみが増える。

全8巻。と書くと途方もない長さに見えるけど、次の挿絵を見るために1ページ読む、次の挿絵を見るためにもう1ページ、と繰り返しているうちにすぐ読み終わってしまう。

主人公のトガリィが、小さな足で一歩ずつ山を登っていくのと同じ。

虫が嫌いな人には1巻が少しつらいかもしれないけど、大丈夫。読み進めればフワフワモコモコした動物も出てくるから。

きっとこれを読み終わった頃には、読書の自信がついているはず。