あらすじ
学校の屋上に出現した大きな水たまり。そこで同級生の女子・水原が泳いでいた。
水たまりに潜って強く願うと、世界を少しだけ変えることができる。
水原が「パドル」と呼ぶその行為を、水野も一緒にやることになる。
学校の屋上に出現した大きな水たまり。そこで同級生の女子・水原が泳いでいた。
水たまりに潜って強く願うと、世界を少しだけ変えることができる。
水原が「パドル」と呼ぶその行為を、水野も一緒にやることになる。
読み始めてすぐ「ん?」ということが何度かあった。
うっかりすると読み飛ばしてしまいそうな、ちょっとした違和感。
それもパドルの影響で生じたものなのだが、それを説明しすぎない(できない)ところに、この作品の面白さががある。
パドルすることで、世界を少しだけ、でも完璧に変えることができる。
主人公の水野が最初にパドルで変えたのは、公衆電話でおつりが出るようしたこと。
単におつりが出る機能が搭載されるだけでなく、昔からそうだったということに歴史までもが書き変わってしまう。
そうやってどんどん新しい歴史が上書きされていき、もとの状態がどうだったのかよく分からなくなっていく、不思議な世界観。
主人公の水野は、世界を変えられるだけの力を公衆電話なんかに使ったり、水たまりに潜るたびに溺れて、そのせいで授業に出損ねて怒られたりと、序盤はひたすら頼りない。
でもミステリアスな水原に引っぱり回されるうちに、だんだんとたくましく、芯のある人間に成長していく姿はとてもみずみずしくて、読んでいて気持ちがいい。
最後には初めにあった違和感も蒸発して、澄み切った読後感に包まれる。