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あらすじ

鍛冶職人の六郎と、鍛冶屋に憧れ六郎を親方としたう小学生の浩太。

六郎はある日、浩太を山へ連れて行く。
中学校に行かずにすぐ鍛冶屋になりたいと言う浩太を説得して、進学させるために。

六郎と浩太の間で言葉少なな会話が交わされるたび、お互いのことをあまり知らなくても、強い結びつきが生まれていくのが分かる。

話は短いけど、山を一歩一歩登っていくみたいに、静かで優しい時間がゆったりと流れていく。

なぜ山かと言えば、自分の師匠がそうやって鍛冶屋の素晴らしさを教えてくれたから、自分も同じようにしようと思った。
それってどう考えても逆効果なんだけど、他に思いつかなかった六郎は山に行く。

一方浩太はそんな大人たちの思惑に気づいてはいるけど、すんなり受け入れられるほど大人にはなれないお年頃。

そんな不器用なじいちゃんと小学生の心の交流の物語。

時折差し込まれる、シンプルで鮮やかなイラストもまたいい。
この話にぴったりな飾り気がなく温かいイラストが、物語の奥行きを広げてくれる。

読み終えたあとも切なくて幸せな余韻が残る。