もしイチ彼と結婚できたら私は夫を見張り続ける看守の花嫁になる。

あらすじ

OLの良香は、中学2年生の時にクラスメイトの「イチ」に恋をしてから、ずっとイチだけを想い続けている。

同僚の「ニ」に告白されるが、イチと比べてしまい、まったく気持ちは動かない。
イチとの思い出を何度も脳内再生しているが、本人とは卒業以来一度も会っていなかった。良香は同窓会を開き、12年ぶりにイチと再会する。

このタイトルを見て、どういう作品を想像しただろうか。
目に飛びこんだ瞬間ドキッとさせる鋭さ、突き放すような乱暴さ、いじけたような湿っぽさ、そういったものを感じとったのだとしたら、その直感は正しい。

これは、そういう面倒くさ~い女の物語だ。
かわいらしい表紙に騙されてはいけない。

なんて自己中心的な女。読み始めてすぐに感じた、良香への印象だ。
だがいわゆる「イヤな女」とはちょっと違う。

自分だけは他の子と違うと思い上がったり、心の中で他人を見下したり、でも他人からは好かれることを期待したり、自分のついたウソにあとでおびえたり、すべて放りだして逃げてしまったり。
こうして書いてみると救いようがないように見える。でもちょっと立ち止まって自分の過去を振り返ってみると、私だって同じような経験のひとつや、ふたつや、みっつや、よっつ……。

忘れてしまいたい過去の自分や、自分のちょっと嫌いな部分を集めて煮詰めた女。それが良香だ。
もう、すがすがしいくらい、イタイ。

始めはイライラするかもしれない。きっと読みながら「なんだこの女!」ってなる。しかし、なぜか、良香の奇行から目が離せない。だんだんと、良香がどんな暴走をするか楽しみになっている。

思うようにことが運ばず落ちこむ良香の姿を見て、ほくそ笑んでいる自分がいる。
そして最後を見届けた時に、ちょっとだけ、ホッとするのだ。

だって、自分にも思い当たる節があるんだもの。