もう一回、初めての告白をするの。

  • はじめての
  • 著 : 島本理生/辻村深月/宮部みゆき/森絵都
  • 出版 : 水鈴社

あらすじ

アンドロイドが自分の所有者との思い出を語る『私だけの所有者』

家出した少女が海辺の駅で、謎の裸足の少女に出会う『ユーレイ』

平行世界でのテロ容疑で拘束された娘を父が迎えに行く『色違いのトランプ』

同じ相手に何度も告白してフラれた過去を消したい少女がタイムトラベルを試みる『ヒカリノタネ』

「はじめて●●したとき」を題材に描く、4本の短編小説。

直木賞作家4人が書き下ろした小説をもとに、YOASOBIが曲を作るというプロジェクト。

現在は『私だけの所有者』を原作にした楽曲『ミスター』が公開されている。

先に曲を聞いていたけど、小説を読んでから聞き直すと一気に解像度が上がる。
聞きながら蘇ってくる小説の情景が、ドラマティックなメロディーと歌に彩られて、さらに感情を揺さぶってくる。

次の曲はどの作品がベースになるのか、いつ公開されるのか、楽しみ。

恋愛、学校、家族、SFと作品によって毛色は違う。

けど「はじめての」だけあって、キャラクターの初々しさや、作品が持つみずみずしい雰囲気は共通している。

迷ったり、悩んだり、行き場を失ったりするけど、最後には前に一歩踏み出せるようになる。
読み終えたあとにちょっとだけ残る切なさも、いいスパイスになっている。

そしてどの作品も、とにかく作者らしさがほとばしっている。

島本理生の、水を打ったような静けさにこもる熱。
辻村深月の、閉塞感に風穴を開けてくれる不思議との出会い。
宮部みゆきの、ヒリヒリしたサスペンスの気配。
森絵都の、スキップするみたいな軽快な会話と展開。

すべての作品に勢いがあって、サクッと読める。

自分の好みがまだわからないという読書初心者も、これを読めば相性がいい作者が見つかるかも。
それこそ「はじめての小説」におすすめ。