あらすじ
大衆紙のインタビューのテープ起こしで細々と生活している小説家志望の則之(のりゆき)。孤独な則之と、柴犬のゴンの心のつながりを描いた物語。
大衆紙のインタビューのテープ起こしで細々と生活している小説家志望の則之(のりゆき)。孤独な則之と、柴犬のゴンの心のつながりを描いた物語。
ひとり暮らしをしている人間が生き物を飼うと婚期が遅れる。毛の生えた生き物、表情のある生き物は特によくない。
私の父の言葉だ。なるほど。ごもっとも。
主人公は作家として芽が出ず、恋人にも振られた則之。
そんなうだつの上がらない則之は、ゴンと出会ったおかげで生活のリズムが保たれ、細々としていても充実した日々を過ごすようになる。
女の子(犬)の話で盛り上がり、焼き鳥を分け合って食べる、そんな則之とゴンの共同生活は、もはや蜜月と呼んでもいい。単なる飼い主とペットではなく、人生のパートナーになっている。
しかしあるできごとをきっかけに、和やかな生活が終わりを迎え、則之は打ちひしがれてしまう。
そんな苦しい場面であっても、たけし節全開のブラックユーモアのおかげで、暗くなりすぎずに読み進めることができる。
特に則之がテープ起こしをするインタビューの内容は、コメディアンとしてのビートたけしのネタを見ているような感覚になってくるほど軽快。
ちょっと前に映画で見たあの人も登場したり、という小ネタもある。
落ちこんだ気持ちをまぎらわそうと仕事に打ちこむ則之のやけくそ感を、そうした猥雑な記事がコミカルに描きだしている。
そして笑いのあとには、きちんと感動も用意されている。
最後に明らかになる、タイトルの「ゴンちゃん、またね。」にこめられた則之の寂しさと、ほんのちょっとの成長を、読んで感じてみてほしい。