人間の子どもを食いたいと言ったのだ!

あらすじ

大きな屋敷で暮らす511歳の男・エベニーザー。
彼は屋根裏にいるビーストにちょっと変わった食事を提供する対価として、魔法で生み出した不老薬や金品をもらうことで、自由気ままな生活を送っている。

「人間の子どもを食いたい」というビーストのリクエストに応えるため、エベニーザーは孤児院からベサニーという女の子を引き取ってくる。

ところがベサニーはとんでもない問題児で……。

モンスターと大人が手を組んで、子どもを騙して太らせて食べようと企むお話。
って書くとなんかすごいけど、ベサニーは大人しく騙されるようなヤワな子じゃない。

大人の想像を軽く飛び越える&ユーモアあふれるイタズラをかまして、エベニーザーを翻弄する。

一方、早く食べたいから早く太らせろと急かすビースト。
エベニーザーがだんだん、部下の手綱を握れず上司から怒られる中間管理職みたいな、かわいそうなポジションに見えてくる。

ちょっと怖いけど笑える、ホラーファンタジー。

ビーストは、オウムとのおしゃべりを楽しんだあとにカゴごと食べちゃうような、性根のひん曲がった食いしん坊。
私の頭の中では、何年も風呂に入っていない3つ目のジャバ・ザ・ハットみたいなイメージだったけど、とにかく見た目も中身も醜いヤツ。

そんなビーストに500年も食事を与え続けてきたエベニーザーも、まあまあ人として大事な部分が欠落している。

“どこで子どもを調達すればいいのか悩んだ結果、ペットショップへ行く”といった浮世離れした言動で、ちょいちょい笑わせてくれる。

でも根っからの悪人ではなく、長生きしすぎて常識とか善悪の基準が麻痺しちゃってる感じ。
基本的には、臆病なお人好しなんじゃないかな。

実は、一番普通なのはベサニーかも。
笑いながら友達の鼻にミミズを突っこむ登場シーンは衝撃的だったけど。
お話が進むにつれ、だんだん優しくなって、どんどんかわいくなっていく。

でも悪ガキ脳と怖いもの知らずは健在で、ビーストと対峙する終盤はハラハラドキドキ。

お話自体はハッピーエンド。でもゾクッとするような余韻が……続編、期待しちゃう。