われ亡命を希望す

あらすじ

中国のステルス爆撃機が羽田空港に降り立った。
警視庁の鶴来(つるぎ)は亡命を希望しているという女性パイロットから、爆撃機には核兵器を積んでいることを知らされる。

一方、鶴来の義兄で警備員の真丈(しんじょう)は、中国人のクライアントの家が何者かに襲撃されている現場に遭遇する。

やがて、2つの事件はつながっていることが分かり、見えない敵をふたりで探っていく。

真丈にとっては妹、鶴来にとっては妻、同じ人を失ったことでつながっている義兄弟。
信頼し合ってはいるけど、秘密も多くて、闇のある義兄弟の絆。

だれが敵で、だれが味方なのかも分からず、確実に信じられるのはお互いだけ。
離れているけど、背中を預け合っている感じ。

はい、私の大好物です。

とにかく、この義兄弟が優秀すぎる。

鶴来は自分の感情も、他人も、組織も、状況も巧みにコントロールするハイスペック腹黒だし。
身体能力と経験値がチート級の真丈は、敵の弱さや動揺に同情を寄せつつ手加減なしで叩き潰していくし。
序盤から、ただ者じゃない感が漂いまくっている。

鶴来は表から、真丈は裏から。
それぞれのやり方で、何が起きているのかを探っていく。

しかしそんなふたりの力をもってしても、予想もつかないできごとが次々に起きていく。
日本はもちろん世界を揺るがしかねないスケールの大きい物語を、ふたりの目線からコンパクトにスリリングに描いている。

鶴来の心理戦、真丈の肉弾戦、最初から最後まで怒涛の展開で、休むタイミングが見つからない。

読み終えても、真丈の経歴や妹の存在など謎は多く残っていて、まだまだ物語は広がっていきそう。
立場が異なる魅力的な裏社会の住人も何人か出てきたし、今から続編を期待してしまう。