あらすじ
舞台は1980年代。
フィジー諸島の小さな島で暮らす12歳の少年・洋助と、海洋生物学者の父・徹郎。
海でプレシオサウルスの子どもを拾った洋助は、クーと名づけて育てることにする。
同じ頃、クーの母親の死骸が近海の島に流れ着き、その存在を隠蔽するため、フランス軍が秘密裏に動いていた。
舞台は1980年代。
フィジー諸島の小さな島で暮らす12歳の少年・洋助と、海洋生物学者の父・徹郎。
海でプレシオサウルスの子どもを拾った洋助は、クーと名づけて育てることにする。
同じ頃、クーの母親の死骸が近海の島に流れ着き、その存在を隠蔽するため、フランス軍が秘密裏に動いていた。
子どもの頃にアニメ映画を見て、すごくハマった。
玄関を出たら10秒で海! という洋助の家に憧れたし、何よりクーがかわいくて。
映画の内容は原作そのままだったので、読むごとに脳内に映像が蘇ってきた。
多少の思い出補正があるにしても、内容を知っていてもグイグイ読まされた。
ストーリーは、穏やかな生活をしていた洋助達のもとへ、クーをねらう悪い大人が現れるというもの。
単なるファンタジーにとどまらず、海での核実験という当時の時事問題を取り入れた重厚な内容になっている。
中盤、平和主義の徹郎が自分と家族を守るために武器を手に取るシーンがある。
本人が望まずとも戦わなければならない状況に追い込まれる理不尽さ。
そんなことのために、そんなことまでやるの? という大国の横暴。
35年前に書かれた作品と同じようなことが、現代でもまだ起きている。
そういう人間の愚かさもまた、この作品には内包されている。
そんなメッセージ性の強い作品だけれど、あとで思い返した時、最初に浮かぶのはやっぱり前半の海のシーン。
洋助がクーや野生のイルカと一緒に泳いだり、学校に行くためにジェットスキーで疾走する時の、海のまぶしさが強く印象に残っている。
この幸せな時間が永遠に続く世界だったらよかったのに。
読んだタイミングと結末の切なさが相まって、ちょっと感傷的になってしまった。