忍耐とユーモアは、それがあればどんな砂漠でも横断できる二頭のラクダだ

あらすじ

シリアで生まれ、20代の時に、紙の宝物をかかえてドイツへ亡命。

「ただ、物語を書きたかった」から母国を飛び出し、ドイツを代表するベストセラー作家のひとりになった著者の自伝的エッセイ。

このままここで書き続ければ命の危険があると感じ、亡命した著者。

ドイツ語で執筆し、現在では世界中の言語に翻訳されている。

亡命から50年が経った現在もドイツで活動し続けている。

自分の作品が母国へ届くことを信じて。

外国人への無理解や、制度的な肩身のせまさ。
ドイツ人の作家や批評家から差別を受けたり。
時には同じ中東系の作家から妬まれたり。

理不尽な扱いに憤ったり、傷ついたりした自らの体験を赤裸々に綴っている。

正直、内容も文体も、気軽にだれにでも勧められるものではない。
読み始めた時は、私も途中で脱落するかもしれないと思った。

だけどユーモアと痛烈な皮肉がクセになって、もう1ページだけ、もう1章だけ……と気づいたら最後までたどり着いていた。

腹立たしい相手の愚かで失礼極まりない言動を克明に描いたあと、書くネタを提供してくれたことへの感謝まで添えてしまう。
そんな著者のタフさと腹黒さに、ちょっと憧れるくらいにはのめりこんでいた。

タイトルにも使った
「忍耐とユーモアは、それがあればどんな砂漠でも横断できる二頭のラクダだ」
は本書の背骨とも言うべき一節。

著者が、どうやってこの境地までたどり着いたのか、その軌跡を感じることができる一冊。