ば-か、ここがもう地獄だよ!

あらすじ

暴力が生きがいの新道。
尻を触ったチンピラに反撃したら、仲間を呼ばれ乱闘になる。

その強さを買われ、ヤクザの親分の一人娘・尚子のボディーガードを強要される。

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一般的に、暴力の世界で女性は弱者に回りがちだ。
新道はそこをやすやすとひっくり返してくれる。

力を誇示することはないが、ケンカを売られた瞬間、嬉々として相手をボコボコにする。

暴力と狂乱で抑圧を吹き飛ばす、日本人初のダガー賞受賞作。

暴力が趣味の社会不適合者だけど、自分なりに居場所を探して生きてきた新道。
縁もゆかりもないヤクザに拉致・半監禁される理不尽にも動じず、生き抜くために淡々と仕事をまっとうする。

一方、尚子はヤクザの親分の過保護な束縛のもと、汚れひとつ許されず、日々、花嫁修業に勤しむ。

生い立ちはまったく異なるが “好きでここにいるんじゃない” という一点で通じ合うふたり。

友達でも恋人でも家族でもない。
名前のつけようのない深いつながりを持った関係になっていく。

ストーリーは新道たちの手の届く範囲だけでおさまっていて、とてもタイト。
言い換えれば、逃げ場のない閉塞感がずっとあり、話が進むほどに醜悪が極まっていく。

しかし、地獄のどん底についたと思った瞬間、思わぬ形でそこを抜け出た先が見えてくる。
そこでもやっぱり、道を切り開くのは暴力。

いっそ痛快なほど、暴力を暴力で打ち破る快作。