なるほど、そうきたか。

あらすじ

上司の机をあさっている同僚の康子を目撃してしまった松尾は、上司の不正を暴く手伝いをさせられることに。証拠を集めるために会社を休んだり、変装したり、小学校の前で張り込みをしたり、康子に振り回されるはめになる。

なるほど、そうきたか。今作は、この書き出しで始まる。

タイトルと表紙を見て、当然舞台、演者、作家、裏方などの物語だろうと思って読み始めたら、いきなり上司を告発しようとするOLのお話。

いや、舞台裏どころか、舞台の外側じゃん。

そういう意味でも「なるほど、そうきたか。」な短編集。

賑やかな表紙そのものの、ドタバタ劇。
と言っても、ドリフのコントみたいなドタバタではなく、人物の内面が、なんだかバタバタしている。

境遇が異なる主人公たちは、みんなそれぞれ、トラブルや悩みをかかえている。どうしよう、もしかして、と頭の中でどんどん問題が大きくふくらんでいく。それを隠すために無理やり起こした行動は、決まって悪い方向に進む。

そうして八方塞がりになって立ち止まった時に、やっと気付かされるのだ。道を塞いでいるのは、自分自身であると。

かん違いや思いこみが晴れた瞬間、無意識に目をそらしていた自分の本当の気持ちに気づかされる。

ひとつひとつの結末に「なるほど、そうきたか。」が用意されていて、とても読みやすい短編集。