あの日、あの時、私は、多分、生まれ直したのかもしれない。

あらすじ

古い団地で姉とふたりでくらす、中学生のみかげ。
日々ギリギリの生活を送りながら、漠然と「死」への興味がふくらんでいく。

そんなみかげが、自称「団地警備員」の老人・ぜんじろうと出会うことで、人生が変わり始める。

みかげは工場で、ロールケーキにイチゴを並べるバイトをしている。
だからイチゴとケーキは、重要なシーンでたびたび登場する。

モノ自体は同じなのに、その時のみかげの心境によって、幸せにも、不気味にも、切なくも見える。

人間関係も、場所も、それはきっと同じ。

序盤は、すごく身構えて読んでいた。
このまま、さらによくない方向へ話が進んでいく気がして。

みかげは今のことで精一杯で、未来を考える余裕がない。
十代にして、すでに人生を諦めきっている感じまである。
おまけに「死体を見てみたい」なんて言い出すんだから、そりゃぁ、ねぇ。

けれど、ぜんじろうとの出会いをきっかけに、みかげの世界が少し広がる。
自分の足元だけでなく、他人に目を向けられるようになる。

みかげ自身も余裕なんかないのに、相手のつらさがわかるから、助けたいと思ってしまう。
その気持ちが伝播して、支え合おうとする人が増えていく。

素直で一生懸命なみかげに、すっかり心奪われてしまった。

終盤には、
みかげ、大きくなったなぁ
と、成長を見守るみたいな気持ちになっていた。