なにがおまえたちを、悪ではなくしているんだい?

あらすじ

おばあちゃんからもらった本「ランド・オブ・ストーリーズ」に迷いこんでしまった12歳の双子。

そこは誰もが知るおとぎ話がいくつもつながり、お話が終わったそのあとも時を刻んでいる世界。ふたりはもとの世界に戻るため「願いをかなえる呪文」に必要なアイテムを探す旅に出る。

数年前の「ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。」という新聞広告があった。

一方にとっての「めでたしめでたし」は、もう一方にとっては悪夢でしかないかもしれない。悪役と呼ばれる人々にも、親がいて、子ども時代があった。絵本には描かれていない裏側やその後に想像をふくらませた物語。

白雪姫に毒をもった王妃は美しさに嫉妬したのが理由だし、魔女が眠り姫に呪いをかけたのだって、パーティーに呼ばれなかったことに腹を立てたからだ。感情のコントロールや報復の手段にはかなり問題があるけど、理由は結構、普通だ。

正義と悪、タイミングやバランスが少し変わるだけで、それらは簡単にひっくり帰ってしまう。

おとぎ話の世界に迷い込んだ双子は、善と悪の境目に立った人たちに触れ、何が正しいことなのかを考えさせられていく。

ただしこの双子は、性格が正反対で普段はケンカばかりしている。

異世界にきてしまって帰り方も分からない状況の中、夢見がちな妹アレックスはすっかり観光気分。憧れのラプンツェルの塔を目の前にしたら感動のあまり泣きだして「(登らないと)一生後悔する!」と命綱なしで塔を登り始める始末。

一方、さっさと帰りたい兄のコナーは、アレックスに振り回されて文句と皮肉をこぼしてばかり。

目線は同じでも、ふたりそれぞれ違う見方で世界を捉えている。

何人もいるお姫様や主人公の性格の違いも面白い。模範的なお姫様のシンデレラ、わがままな赤ずきん、めでたしめでたしを素直に喜べず悩み続ける白雪姫……。

性格が違うのは当然といえば当然なのだが、それぞれの物語が生きざまに大きく影響していて、とても親しみやすく生き生きとした人物にアレンジされている。

夢や希望でキラキラしているだけではなく、その光から生まれた影の部分も描きだした新しいファンタジー。