あらすじ
いじめられっ子の中学生・一真(かずま)は、同級生に万引きを強要される。店番の登(のぼる)に捕まった一真は、見逃してもらう代わり、読み書きができない登のために本を朗読する。
やがて登が物語、一真が文章に手分けして小説を書き、作家デビューを目指すようになる。
いじめられっ子の中学生・一真(かずま)は、同級生に万引きを強要される。店番の登(のぼる)に捕まった一真は、見逃してもらう代わり、読み書きができない登のために本を朗読する。
やがて登が物語、一真が文章に手分けして小説を書き、作家デビューを目指すようになる。
この1冊の中で、何冊もの名作小説をふたりと一緒に読んだような感覚になってくる。本が好き、もっと読みたいという人のための、読書の手引きにもなってくれる。
登はその口のうまさと度胸から、近隣のチンピラやヤクザからは一目置かれる存在。自分に自信が持てなかった一真も、ハンデを感じさせない登の豪快な生き様に触れていくうちに、少しずつ変わっていく。
登はディスレクシア(知能に問題はないが脳の異常で読み書きだけができない障がい)であるがゆえに、言葉にはとても敏感。
芥川龍之介の『羅生門』の最後の一節「下人の行方は、誰も知らない」に違和感を覚えた登は「龍之介だけは知らねえとおかしい」といちゃもんをつける。
確かに、そう言われてみればそうだ。
そうしてふたりで読んだ作品を徹底的に分析し、「インチキじゃない小説」を書こうと試行錯誤を繰り返す。
ひとつの文章を何度も書き直すシーンは、普通なら飽きてしまいそうなのに、ふたりのテンポのいいやりとりのおかげでどんどん読み進められた。
同じ趣味を持つ仲間と語り合ったり、がむしゃらに夢に向かって挑み続けている間はとても楽しい。
でも夢を叶えたとしても、そこがゴールではない。そこにはそこなりの現実が待っている。
一真と登の関係性も、小説家としてデビューしたことで少しずつ変わっていく。
読み終えると、ふたりがすごした日々も、作中で紹介される名作と同じように、ひとつの作品として語られていたように見える。
主人公は一真と登だけど、主役は物語であり作中に出てくる小説。そう考えると、タイトルの「小説入門」の意味が分かるような気がする。