奴らにとっちゃ、鮫みたいな存在だからじゃないの?

  • 新宿鮫
  • 著 : 大沢在昌
  • 出版 : 光文社

あらすじ

犯罪者たちから「新宿鮫」と呼ばれて恐れられる敏腕刑事・鮫島(さめじま)。

警察官を狙った連続射殺事件が発生し、使われた銃を手がかりに改造銃製造の天才・木津(きづ)を捜すが、木津もまた鮫島のことを狙っていた。

ハードボイルド小説『新宿鮫』シリーズの第1段。

いつもこの記事を書き始める時に、とっかかりになる言葉を探す。記憶に残った1文とか、最初に浮かんだ感想とか。

この作品の場合は「鮫島がカッコいい」のひと言に尽きる。

キャリアなのに出世せず署内でナンバー1の検挙数を誇る鮫島。
自分の筋を通すためには相手がだれであろうと容赦せず、そのせいで味方から嫌われることすらあるアウトロー。

頭が切れる上に、ひとりで敵のアジトに乗りこんでいっちゃうような向こう見ずな性格のおかげで、展開もスピーディー。

ちゃんとした刑事モノで、ちゃんとカッコいい主人公に久しぶりに出会った気がする。

ハードボイルドを自称するくらいだから、文章はとてもシンプルで説明も最小限。
その代わり、キャラクターのセリフがとても活き活きしている。

犯罪者やライバルの刑事などとにらみ合う強い鮫島と、恋人と軽口を叩く人間味の強い鮫島のギャップも、いい。
これからまだまだ新しい魅力が出てくる予感しかしない。

なにせシリーズはあと10作もある。