ロックの伝道師は孤独を余儀なくされるのであった。

あらすじ

1972年、ラジオを買って洋楽に目覚めた中学生のオクダ少年。

ラジオや雑誌で情報収集をして、自転車をかっ飛ばしてレコードを買いに行き、友達の友達からレコードを貸してもらったり。

好きなアーティストやジャンルは次々に変わっていくけど、音楽への愛だけは深まっていく。
1970年代の音楽について語るエッセイ。

奥田英朗のエッセイは、ひねくれてて好きだ。
ひねくれてるところをちょっと達観した感じでセルフ指摘して「ははは。」で結ぶの、好き。

たまに、まったく知らない話をしているのに、なぜか面白くて聞き入ってしまう人っている。
このエッセイは、そんな感じ。

著者に合わなかったアーティストも、はっきり書いている。

でも、ただ拒絶するのではなく、なぜ合わないのかを分析しているから嫌な気分にはならない。

むしろ、本当は好きなんじゃないの?ってくらい、ちゃんと分析している。

世代が全然違う私には、アーティスト名も曲名も半分以上は呪文だった。
でも不思議なもので、あまり気にならなかった。

オクダ少年がこの曲をどれだけ好きなのか、どこが素晴らしいのかを熱く語る、その語り口から自分もその曲を聞いたような気になる、かも。

まあ、今は全部、検索すればすぐに聞けるしね。

70年代の田舎町で音楽雑誌を読んで「聴きたいよー」と悶絶しているオクダ少年には悪いけど、やっぱり、実際に曲を聞きながら読むのがおすすめ。