「きみ、おうさまなの?」クマは たずねました。

  • おうかんはだれのもの
  • 著 : ケアリー・フェイガン(文)
    ディーナ・シーファリング(絵)
    訳:橋本あゆみ
  • 出版 : 化学同人

あらすじ

おうかんを拾ったねずみは、みんなから「おうさま」とちやほやされてご機嫌。

ところがおうかんは他にもたくさんあって「おうさま」「じょおうさま」だらけに。

でも、くまだけはおうかんが見つけることができない……

小学生の頃、流行のゲームを私だけ持っていなかった。
友達と集まってもみんなゲームに夢中で、私は横から画面を覗くだけ。

一緒にいるのに輪に入れない寂しさがあった。

その時のことを思い出して、ちょっと切なくなってしまった。

「おうさまなの?」と聞かれたねずみは「そうだとも」と答える。
そして、わかりやすく調子に乗る。

周りの動物たちも、なんの脈絡もない「おうさま」の誕生を無邪気に喜び、あれこれお世話する。

「おうさま」「じょおうさま」がどんどん増えて権力争いが始まるのかと思いきや、一緒になって遊び始める。
もしかしたらみんな、ごっこ遊びか何かしているつもりなのかな?

ずっとほのぼのした空気で包まれていて、動物たちはみんな楽しそう。

だから余計に、王冠を見つけられなかったくまの寂しさが際立つ。

そしてそのあとのねずみの優しさが、もう、しみるしみる。

やっとゲームを手に入れた時にはもうみんな飽きていたという悲しいオチが待っている小学生の私に、読ませてあげたい。