あらすじ
弁護士の麗子(れいこ)のもとに、元彼・栄治(えいじ)が死んだと知らせが届く。
実は、栄治は大手製薬会社の御曹司で、不可解な遺言を残していた。
「全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
麗子は共通の知人である篠田(しのだ)から、自分が栄治を殺したことにして財産をもらうことができないか、と相談を受ける。
弁護士の麗子(れいこ)のもとに、元彼・栄治(えいじ)が死んだと知らせが届く。
実は、栄治は大手製薬会社の御曹司で、不可解な遺言を残していた。
「全財産は、僕を殺した犯人に譲る」
麗子は共通の知人である篠田(しのだ)から、自分が栄治を殺したことにして財産をもらうことができないか、と相談を受ける。
ほとんどのミステリーはフーダニット(だれがやったのか調べる物語)だ。
その逆の手法が『古畑任三郎』や『刑事コロンボ』で有名な倒叙(最初から犯人がわかっている物語)。
この作品はどちらでもない“どうやったら犯人に選ばれるか”を考えるところから物語がスタートする。
つかみ、最高。
病死した元彼・友人を殺したことにして遺産をもらおうとするなんて、言ってしまえばタカリだし、悪者になりかねない。
ところが主人公の性格のおかげか、そういう印象はほとんど受けなかった。
麗子は弁護士としてはとても優秀だけど、とんでもなく高飛車。
婚約指輪の値段が安かった(本人基準)から、プロポーズを蹴る。
ボーナスが減ったことに激怒して、その場で弁護士事務所を退所。
頭がいい分、相手の気持ちを慮ることが苦手。
おまけにお金が好きだと公言していて、割に合わない仕事はきっぱり断る。
自信過剰で、憎まれようと堂々としている姿はいっそ清々しくて、カッコいい。
他の登場人物も、資産家一家の物語とあって、なかなか我が強いメンツがそろっている。
みんな麗子に気圧されることなく己の欲望を貫いていて、そのせいで物語が入り組んでいる。
こういうことかな? と思った途端にひっくり返され
ということはこっちか! となった途端にまた予想外のことが起こる。
どんどん状況が変わっていき、物語の最初と最後では、見える景色がまったく違う。
初めはツンとしてお高くとまってる感じがあった麗子が、ラストに近づくにつれ、髪を振り乱して必死になっていく姿は、やっぱりカッコいい。
意外性の連続で息つく間もないミステリー。