あらすじ
港の季節アルバイトに集まった7人の男女。
ある夜、そのうちのひとりが死んでいるのを発見する。
ところが彼らはなかなか警察を呼ぼうとしない。
どうやら、彼らには警察を呼べない事情があるようで……。
港の季節アルバイトに集まった7人の男女。
ある夜、そのうちのひとりが死んでいるのを発見する。
ところが彼らはなかなか警察を呼ぼうとしない。
どうやら、彼らには警察を呼べない事情があるようで……。
やまない雨はない(だから耐え続けなさい)とか
話せばきっとわかるはず(だからちゃんと向き合いなさい)とか
愛があればなんでも乗り越えられる(だからもっと努力しなさい)とか
そういう正論を無意識に、呪いのように他人に押しつける人は、どこにでもいる。
正しさとは? にまっすぐ挑んだ作品。
冒頭、アルバイト達が魚をさばいているシーンから始まる。
普通に仕事をしているだけなのに、不穏な空気が漂っている。
なんでもない日常の、薄皮を隔てたそのすぐ下に、何かがひそんでいるのをひしひしと感じる。
あらすじと冒頭の印象で、てっきりひりひりしたサスペンスになるのだろうと思い込んでいたけど、すっかり裏切られた。
ひりひりしていることには違いないんだけど、価値観が異なる他人との会話劇や、身につまされるような状況によるひりひり。
はじめ、登場人物の印象は、とても薄かった。
でも話が進むにつれ、それぞれが抱えた事情とともに、急にキャラクターがはっきりした輪郭を持ちだす。その事情ゆえに、必死に〈その他大勢〉になろうとしていたのだとわかる。
さまざまな理由で社会からこぼれ落ちた彼らと、仲間の死が、どう関わってくるのか。
最後の最後まで予想がつかない、濃密な一夜の物語。