いきなり声が出なくなる。声帯が、思うように動かなくなる。

あらすじ

かつて人気の子役だったことを隠して、静かに高校生活を送ろうとしていた透(とおる)。

ところが、同級生になった少女・遥(はるか)は、透が子役だったことを知っていて、自分が所属する朗読部に誘う。

しつこく勧誘されるが、透は拒否し続ける。なぜなら、大勢の人を前にすると声が出なくなっていたから。

朗読が題材なので、絵本などの作品がたくさん登場する。
特に、朗読部の先輩が『ちいちゃんのかげおくり』を読むシーンはぐっと引き込まれた。

作品は知らなかったけど、内容紹介と読み方を自然にからめて説明されているので、すんなり入っていける。

実際に、作中のキャラクターの朗読を聞いているような没入感があった。

作品の解釈が変われば、読み方も変わる。
考えてみれば当然なんだけど、朗読の場面で解釈を考えたことはなかった。

朗読は音声ですべての情報を伝えなきゃいけない。
だから、キャラクターの動作を説明するなんでもない一文だったとしても、読むトーンによって、聞き手が感じる印象が変わってしまう。

書かれているものを感情こめて読む、くらいの認識でしかなかったけど、朗読って意外と奥が深いのね。

作品ひとつずつ、背景や解釈などが丁寧に描かれていて、これを書いた人は本当に本や朗読が好きなんだろうなと想像できる。

作品の解釈について仲間同士で語り合うシーンなんか、ちょっと憧れてしまう。
そういう仲間、学生時代に欲しかったな……。

朗読に情熱を注ぎ、もがく高校生たちの物語。