私には、この大王国の黄昏の鐘が聞こえるよ

あらすじ

強大なる中央集権国家を維持するため、稀代の悪法を用いて繁栄を極めてきたロジオン王国。
王都では、王国と王家の権威存続のため、召喚魔術の準備が進められていた。

禁忌を破ろうとしている王国に疑問をいだく魔術師団長のゲーナとその甥のアントーシャは、召喚魔術を阻止する計画を考える。

登場人物は多いし、独自の用語もたくさん出てくるけど、気づけば、設定の海に首までどっぷり浸かっているのが心地よくなっている。

中世ヨーロッパを彷彿とさせ、剣と魔法と家柄が力を持つ世界観。
古典劇っぽい言葉遣いに、魔術の発動前に長たらしい詠唱が必要な、オールドスクールなファンタジーのシリーズ第1作。

剣や魔法のバトルよりも、権力者同士の権力争いが多め。

権力者達は、地位を守るためなら平気で他人を陥れるし、王国と自分の地位の安定のためなら多くの民が苦しむのも致し方なしという、清々しいクズっぷり。

でもそんな人達も、自分の子や親に対しては惜しみない敬愛を寄せていて、大事な人を守るために今の地位を守り高めていきたいという明確な動機があるのが見えて、群像劇としても面白い。

権力者達のシーソーゲームが繰り広げられている間、主人公・アントーシャはちょっと影が薄め。

ところが、久々に登場したなと思ったら突然大活躍したり、聖人のごとき優しさや愛されキャラっぷりを披露したり、出番は短いくせに着実に印象を残していく。
そして終盤になると、一気に話の中心に食い込んでくるデキル子。

そのくせ、いよいよ面白くなってきた!ってところで作品が終わるという、してやられた感……くうぅ。
今作はまだまだ前奏って感じ。

すでに3巻までは出ているけれど、もっと長編になりそうな予感。