野生動物として生きるとはどんなことなのだろう。

あらすじ

野生動物の目に、世界はどう映っているのか。

著者は実際に野生動物になりきって自然に飛びこむことで、その生態を理解しようとする。

「とてつもなく変態で、ありえないほど文章がうまい」
帯に大きく書いてある。

それを見ていたから、ふーん、どんなもんよ? と半笑いで読み始めた。

想像を軽々と飛び超える、とびっきりの変態がそこにはいた。

著者はまずはその動物のことを徹底的に調べる。
身体構造、習性、生息地の環境など。
そして、自分の体で実践してみる。

アナグマになりきって穴で眠る。
ミミズを食べる。
歩くときはアナグマの目の高さで。

そんなことをしながら、頭の中では
“動物に感情はあるのか?”
“アナグマは夢を見るのか?”
といった学術的な分析を繰り広げている。

それも、ウィットに富んだ文章で。

そうしている間にも、著者は着実にアナグマ化していく。
夜に活動するかわりに昼間は眠ってすごし、嵐がすぎるのを穴の中でじっと待つ。
視力よりも嗅覚と聴力が敏感になり、自分の肉体が自然の一部となっていくのを感じる。

実験が終わって街に戻ると、情報の多さと騒がしさに動揺してしまうほど、アナグマになりきっている。

けれど、やっぱり人間。
おいしい食事を前にすればあっさりと、“穴より街がいい”に戻ってしまう。

にもかかわらず、次はカワウソになりに行く。

これを変態を呼ばずしてなんと呼ぶ。

すべては、その動物のことを“もっと知りたい”というシンプルな衝動に突き動かされてのこと。

好奇心と知識欲、そして動物へのリスペクトにあふれた一冊。