こうなることは、観測済みだったの

あらすじ

11歳の蓮司(れんじ)は野球のボールを頭に受けて気を失い、目覚めると20年後の自分の体になっていた。
蓮司の婚約者を名乗る小春(こはる)に導かれ、蓮司は大人の自分と入れ替わったことを知る。

一方、11歳になった31歳の蓮司は、すぐに行動を開始する。
これから起きる悲劇を防ぐために。

いくつかある乙一の別ペンネームのうち、青春、恋愛などソフトな作品を担当する中田永一。

本作はファンタジーであり、ミステリーであり、恋愛でもあり、ちょっとダークな面もある。

中田永一のおいしいとこ詰め合わせみたいな作品。

未来の自分が残した記録を頼りに行動していく。
あとから追いかけてくる自分のために記録を残す。

これが同時に進行していく。

序盤では、大人の蓮司と子どもの蓮司の行動がどうつながるのか、まったく分からない。

けど話が進んでいくにつれ、ふたつの視点がひとつへと収束していくのは、新しい感覚だった。

知っていること、知らないこと
意図してやったこと、無自覚にやったこと

それらの意味があとになって分かる快感も、たまらない。

タイムリープもの、入れ替わりものはもうやり尽くされたような気がしていたけど、いやぁ、やっぱり楽しい。