水が無ければ牛乳を飲めばいいのに

あらすじ

実家は三代続く北海道の専業農家。

漫画家になるまで農業に従事していた著者が自らの経験をもとに描く、ノンフィクション農家コミックエッセイ。

1巻の表紙を開くと、そこには筆文字で「農家の常識は社会の非常識」。

確かに、非農家にはどの話題もひたすら新鮮。っていうかもはや、意味不明。
なのにどういうわけか、すっごく楽しそう。

冷凍庫は国産肉で満杯、高級メロンも食べ飽きているなどの「貴族」エピソードがある一方で、子どもの頃から年中無休で手伝いに駆り出され、収穫期は睡眠時間もほとんどないような過酷な労働環境という、両極端な非常識を同列で語っちゃう。

農家コミックエッセイと言いつつも、思っていたよりもずっと幅広い話題が飛び出てくる。

かわいくて憎たらしい動物とか、ケガが絶えない最強父ちゃんとか、ちょっとお下品なエピソードまで。
豪快で痛快な話ばかりじゃなくて、先日完結した『銀の匙』に通じる、命をいただくことや農家の厳しさにもちゃんと触れている。

でもどんな話も、最後は笑いで締めるところは徹底している。

大変な思いをしたり不満をもらしたりもしているけど、すべてはとどまることを知らない農業愛で包まれている。

いい意味で、なんにも考えないで読めるエッセイ。