この裁判のなかで、絶対に嘘をつかないでね。

あらすじ

愛犬を殺された中学生の光一は、父が犯人ではないかと疑う。司法浪人の友人の力を借りた光一は、父を民事裁判で告訴する。

悪意を持ってペットを殺したとしても、殺人罪は適用されない。

ペットは人ではないから、器物損壊になるのだという。動物愛護法もあるにはあるが、器物損壊よりも量刑が軽いので、悪質なケースは器物損壊が適用されることが多い。

一緒にくらしていた家族の一員が、法律では「器物」になってしまう。話を聞くだけで、やるせない気持ちになってくる。

そういう物語だと、思っていた。

うそは決して許さず、冷酷なほど厳格な父に、光一は生まれて初めて反抗する。

一緒に住んでいる父親を訴えるなんてやめた方がいい、そんな周囲の忠告も聞かず、光一は証拠を集め、告訴を断行する。

未成年であっても、代理人をつければ訴訟を起こすことはできる。それにしても、中学生が法廷に立つなんてあまりにも無謀だ。

しかし光一は、そこまでしなければいけない理由があった。

ペットの尊厳を世に訴える作品かと思って読み始めたけれど、あまりに残酷なその「理由」を知った時は衝撃を受けた。

途中にあった、見過ごしてしまうようなほんのかすかな違和感が伏線となって帰結するラストは、まったく想像がつかない。

表紙のイラストで甘く見ず、心して読んでほしい。