なんて日本人は言葉に対して繊細で、粋な感覚を持っていたのだろう

表紙画像 :思い出して使ってみたい美しい日本語

あらすじ

珍しい言葉ではないのに新鮮に感じたり、驚いたり、心地よかったり。

著者の出会った人々がふとこぼした美しい言葉を集めた一冊。

▼最新号ページの本文にはフォントストリームフォントメドレーのフォントを使っています。

こんなものにも名前がついているのか、と驚かされることがある。

なんでもないような一瞬を慈しみ、それを言葉として表現しようとした人がいたのだと考えると、ロマンティックというか、もの好きというか……。

でもそういうこだわりや遊び心の出どころを知ると、急に親近感が湧いたり、わけもなく嬉しくなったりする。

各話、単語や慣用句をひとつ取り上げ、その言葉の成り立ちや背景、著者がその言葉に出会った場面について語る。

小鉢にちょっとずつ盛られたお通しみたいに、季節や日常を一口サイズに切り出してくれる。
サクッと色々楽しめるのと、なにが出てくるのかわからないワクワク。両方のおもしろさがある。

各話のテーマとなる言葉を口にする知人も素敵だが、その言葉に心の琴線が震える著者の感性も同じくらい素敵。

季節の移り変わり、生活の一幕、人間関係のおもしろさと難しさ。
素朴だけどしっかりと手触りのある文章で綴られる。

この本を読んでいる間だけ、時間の進みがゆっくりになった気さえしてくる。

今この一瞬を大事にしなきゃだめだと、優しく諭されるような感覚がした。

ここにある言葉たちは、時間が経つうちに少しずつ忘れられ、消えていくのかもしれない。
そんな儚さもまた、美しいと感じる。