この幸せは、永遠に失ったはずだった。

あらすじ

譲は、過去からタイムスリップしてきた10歳の女の子・ちぃ子と出会い、成り行きで共同生活することになる。

次第に、自分が子どもの頃に起きたある事件と、ちぃ子はつながっているのではないかと思い始める。

時間は有限。
当たり前のことだけど、幸せなうちは、それが永遠に続くような気がしてしまう。
気づくのはいつだって、手遅れになったあと。

でも、もし失った時間をもう一度、取り戻せるとしたら?

喪失と癒やしの物語。

娘を亡くしたショックから立ち直れず、妻とも別れてひとりで暮らしている譲。

娘が死んだ時と同じ年で、家庭に事情をかかえたちぃ子。

ふたりは、お互いの心の欠けた部分を埋める存在になっていく。

この共同生活が永遠には続かないとわかっているから、一日一日を大切にすごす。
そんなふたりの日常が、とても丁寧に描かれている。

読んでいるこっちも、この時間が永遠に続いてほしいと願ってしまった。

けれどふとした瞬間、冷水をぶっかけるように不穏な空気が漂う。
ちぃ子のタイムスリップ、そして譲の子どもの頃の事件を、決して忘れさせてくれない。

終盤になって、この時間の仕掛けがぐっと効いてくる。

とても切ない物語だけど、ラストにはそれを上回る救済が降り注いでくる。