あらすじ
印刷会社の営業・浦本(うらもと)は、印刷を受注し、出版社と印刷工場の間を取り持つのが仕事。
作家、編集者、デザイナー、DTPオペレーター、印刷技師など、さまざまな人の手を経てようやく1冊の本が出来上がる。
印刷会社を舞台に、本を造ることに情熱を燃やす人々の、奮闘の日々。
印刷会社の営業・浦本(うらもと)は、印刷を受注し、出版社と印刷工場の間を取り持つのが仕事。
作家、編集者、デザイナー、DTPオペレーター、印刷技師など、さまざまな人の手を経てようやく1冊の本が出来上がる。
印刷会社を舞台に、本を造ることに情熱を燃やす人々の、奮闘の日々。
『活版印刷三日月堂』シリーズで小さな工房の話は読んだけど、こっちはもっと規模が大きくて近代的。
DTPで組版して、1枚の大きな紙に16ページ分印刷して、折って裁断して本にする。
インクの調合となると、いまだに職人の熟練の技が必要だったり。
自分が知らない世界を知れるのは楽しい。そういうのも、本の醍醐味。
情熱あふれる浦本と、冷静な仲間達が衝突し合うシーンが結構ある。
浦本は、自分は単なる印刷屋ではなく、作家や編集者と一緒に本を造るパートナーだと思っている。
しかしその思いだけが空回りしてしまったり、客の熱にほだされて無理を受け入れ、内部からブーイングを買うなんてこともしばしば。
一方冷静派は、印刷・出版は斜陽産業で、復活することはもうないと割り切っている。
冷静に現状を捉えているからこそ、その船を沈ませないために、日々の仕事を確実にこなしていくべきだと考えている。
だから、有り余る熱意にまだ実力がついてきていない浦本にイライラしちゃうことも。
それぞれの言うことも分かるから、全員に感情移入してしまう。
そして、みんなに共通しているのが、いずれ紙の本は消えるかもしれないという不安。
好きだから消したくない、今の仕事を少しでも長く続けたいという強い気持ちが、作品の柱になっている。
現場のリアルを知れるのがお仕事小説の楽しいところだけど、この作品は、その中でも屈指のヒリヒリした熱さがある。