あの頃の“みちくさ”は決して時間の浪費ではなかった

あらすじ

秋田県の山村で育った少年時代を生き生きと語る。
四季の移ろい、農作業の苦労、刺激的な学校生活と先生……
『釣りキチ三平』の作者が描くエッセイ。

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作中、著者は何度か「みちくさ」についてつづる。

学校帰りのあぜ道や山で文字通り「みちくさ」を食い、「みちくさ」の汁を服につけて母に苦い顔をされる。
農作業のあとには、母が泉の水と、そのへんからとってきたアザミで味噌汁を作ってくれる。

基本的に素材そのままの味だが、なんともおいしそう。

まさか「みちくさ」のお話が続くとは思わなかった。

挿絵ならぬ挿し漫画が各話にある。
当時の時代も、山村での生活も知らない私にも、イメージをダイレクトに伝えてくれる。

著者の生年から推測するに、出てくる話題は1950年前後が主だと思う。

ものがない時代で、学校から返されたテストの紙が家族のトイレットペーパーになる。
点数がよくないテストは下の方に隠して家族の目に触れないよう苦心するなど、笑い話が満載。

農耕機が普及していない時代なので、田植えも堆肥の運搬も全部人力。
子どももガッツリ労働力としてカウントされ、その過酷さに「絶対に百姓にはならんゾ!!」と心の叫びを上げる。

けれど苦労や不便の多いそんな暮らしへの愛も、同じくらい伝わってくる。

現代は失われてしまったものが詰まった作品。