よかったら俺を拾ってくれませんか

あらすじ

さやかは自宅の前に行き倒れていた見知らぬ男を助ける。

男の料理に胃袋を掴まれたさやかは、その男・樹(いつき)をハウスキーパーとして雇うことを提案する。

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“道草を食う” という言葉は、人や荷物を運ぶ馬が道ばたの草を食べ始めてしまって進めなくなることから来ている。
本来、道草を食うのは人ではなく馬なわけだ。

でもこの主人公たちは、道草をもりもり食う。
それもおいしく、食う。

散歩しながら道草をとり、樹が料理して、ふたりで食卓を囲む。

ヨモギ、フキ、タンポポ、ノビルなどの定番から、イタドリ、イヌガラシ、スカシタゴボウなんて初めましてな野草までたくさん登場する。

天ぷら、和えもの、おひたしなどなど。
文庫の巻末にはご丁寧にレシピまでついている。

料理もさることながら、散歩中も食事中もふたりはイチャイチャしっぱなしで、ごちそう様ですって感じ。

けれどふとした瞬間に、樹のバックグラウンドの不明さが影を落とす。
聞きたいことはたくさんあるのに、聞けばいなくなってしまう気がして、さやかは聞くことができない。

どこから来たのか? 苗字は?
旅をしながら野草を撮影していること以外は、謎に包まれている。

そんな緊張感と甘々なラブコメパートとのギャップが楽しい。

そのへんの雑草が、食べられる道草かも? と足を止めたくなる、おいしいお話。