あらすじ
子育てが一段落し、若いころから憧れだった初代フィアット・パンダを購入した直樹。
新潟で車を引き取り東京へ帰る途中、古いカーナビに導かれ目的とは別の場所にたどり着く。
そこで直樹は、赤いパンダの思い出を持つ人とめぐり合う。
少し不思議な5作を収録した短編集。
子育てが一段落し、若いころから憧れだった初代フィアット・パンダを購入した直樹。
新潟で車を引き取り東京へ帰る途中、古いカーナビに導かれ目的とは別の場所にたどり着く。
そこで直樹は、赤いパンダの思い出を持つ人とめぐり合う。
少し不思議な5作を収録した短編集。
いずれも短い期間を切り取ったお話。
平凡な日常にふいに不思議ななにかが現れ、慣れてきたころには、いずこかへ去っている。
なんだよ、もっといてくれてもよかったのに。
という寂しさを残しつつ、どこか温かい気持ちになっている。
好きだったのは、あらすじにも書いた『パンダに乗って』。
フィアット・パンダに乗りこむと、ナビが勝手に道案内を開始する。
言われた通りに車を走らせると、たどり着いた場所で、赤いパンダを知っている人と出くわす。
はじめは戸惑っていた主人公もだんだんと楽しくなってきて、行き先のわからないドライブにつき合ってやる。
主人公は『ナイトライダー』よろしく車に話しかけながら、パンダの思い出をめぐっていく。
といっても返事は「音声案内を開始します」「左折です」くらいのものだが、その無口なところさえ、なんだか愛しくなってくる。
ほかにも
息子は新型コロナウイルスを感知できるのかもと思い始めた男や
閑職に追いやられた男たちにボクシングを教える謎の老人など
日常に差しこまれたささやかなファンタジーと、ほんのり切ないラストが癖になる短編集。