明日からまた新しい冒険が始まるのね。

あらすじ

交通事故で昏睡状態になってしまったルイの部屋から、今後やりたいことを書いた手帳を見つかる。母のテルマは、息子に代わってそのリストを実行し、その時の様子を撮影した映像をルイの病室に持ち帰る。

ルイの願望を実現することで、絶望的と言われた彼の容体が回復することを信じて。

主人公のテルマはシングルマザーでキャリアウーマン。仕事ではタフな彼女も、事故を防げなかった後悔や、これまでの自分の母親ぶりを振り返って、深く落ちこんでしまっていた。

そんな時にルイの手帳を見つけたテルマは、半分捨て身、もう半分は奇跡を信じて、クレイジーな手帳の指示を実行していく。

旅をして、体を酷使して、ティーンエイジャーのようにハメを外して、息子の友だちと友だちになって、自分と母と仲直りして、恋をして……。

初めはルイのためにやっていたのだが、いつの間にか、テルマ自身が救われていく。女として、親として、これまで駆け足で通りすぎてきてしまった人生を取り戻していく。

本作のポイントは、苦しみや悲しみも、全部ユーモアで蹴ちらしてしまうところだ。

昏睡状態のはずのルイが、家族や医者や看護師の会話に聞き耳を立てているところなど、その際たる例だ。ほぼノリで書いたリストを本当に実行してしまった母の武勇伝を笑い、祖母から秘密を打ち明けられた時も「信用してくれていいよ、ぼくは墓みたいに口が堅いからさ」なんて冗談をかましてくれる。

テルマだって負けていない。ルイの事故をきっかけに仕事を辞めるのだが、ただ黙って去りはしない。セクハラ発言を繰り返す社長に往復ビンタをおみまいしたところなど、ほれぼれするほどカッコよかった。

明日のことなんか分からない。分からないからこそ、どうにでもなる。未来への絶対的な希望を持つことで、現在の苦境を乗り越える力を得ることができる。

そんな可能性に満ちあふれた読後感だった。