あたしにあんたを置いていけるわけがないでしょう?

あらすじ

あと数日でクリスマスを迎えるニューヨークの田舎町で、10歳の少女がふたり行方不明になる。

やがて、過去に犯人逮捕で解決したはずの誘拐殺人事件と同じ手口であることが判明。子どもの頃に誘拐事件で妹を失った地元警官ルージュと、小児性犯罪の専門家アリが加わり捜査が始まる。

「いっそ雪が降った方が暖かいのに」

いつだったか、雪国が舞台のドラマでそんなセリフがあった。

この作品は、珍しくクリスマス近くになっても雪が降らないニューヨークの田舎町が舞台。最初から最後まで、指先がしびれるような冷たい空気感が漂っている。

妹の事件の真犯人が野放しになっていると知り、捜査にのめりこんでいくルージュ。専門家としてルージュに協力するアリ。

誘拐された2人の少女、知事の娘で優等生のグウェンと、いたずらとホラーが大好きなサディ。見知らぬ建物の地下室に閉じこめられてしまったふたりは、力を合わせて脱出を試みる。

誘拐された少女と、少女を捜す者たち。
現在の誘拐事件と、過去に起きた誘拐事件にかかわった者たち。
中と外、現在と過去、ふたつの異なる軸が互いに影響し合っている。

ストーリーの鍵を握るのは、ミステリアスなアリと、エキセントリックなサディ。このふたりの魅力で物語にどんどん引きこまれていく。

アリはとても有能だが、顔に大きな傷があり、なぜかルージュの過去をよく知っている。

サディは以前、死体メイクをして地面に寝転び、事件だと思って駆けつけた警官を驚かした伝説を持つ、ちょっとぶっ飛んでる子。恐れ知らずなサディに励まされ、グウェンはじっくりと脱出のチャンスをねらい続ける。

ルージュとアリの関係、グウェンとサディの友情、この結末を見届けた時、原題の「JUDAS CHILD(おとりの子)」の意味が重たく響いてくる。

次から次へと新しい登場人物が出てきて大変だと思った瞬間もあったけど、全部読み終わってみれば、本筋はまっすぐ一本道。複雑に見えるけど、じっくり読み進めていけば、混乱せずにゴールまでたどり着ける。